イカダ物語

休みつつも、仕事柄というか、役割柄、新学期に向けて連日色んな情報・数字を目にしたりしていますが、そろそろ頭で考えるのも疲れてきました。コロナ関係の本も3冊一気読み。

でも、結局どの人もみんなそれぞれちょっとずつ違うことを言っています。

やはり読み手がその中から何を選ぶか、な気がしてなりません。

 

私は多数派のご意見を疑ってかかるくせがあるので、ほぼ毎日流れてくる情報は頭の片隅に置きつつ、少数であっても違う意見の違う角度から見ている人の、しかも、自分の言葉に責任をもっている人のご意見を探したりします。

数字に関して言えば、ただ増え続ける感染者数だけに目を向けるのでなく、陽性者=感染者ではないので、実際の発症者率、その中の重症者率、死亡率、回復率が重要なのではと思っています。

連日強調されるのは、そういう数字ではないですが、、

 

話は変わって、1学期おもしろかった子供たちのことを少し。

4,5歳児クラスのやま組のイカダ作りのことを少し振り返ってみます。

少しと言いつつ、長くなる予感。。。

なぜなら、このイカダ作りはほんとに何日もかけて子供たちが取り組んでいったので、物語が長編になると思って、なかなかFacebookにも書けていませんでした。

 

もともとは前年度スタッフぐっちーの提案で出てきたワード、イカダ作り。

 

年度初めの子供ミーティングでどんなことをやってみたいか、聞いてみたところ、去年の話を覚えていたAが「イカダ作りたい」というところからスタートしています。

 

今年ののやま組は男子6人。「イカダ作り」というワードになんだかわくわく感があるよう。

5月、「イカダってどんなイメージしてる?みんな違うかもしれないから、描いてみる?」って、言うと、、みんなそれぞれのイカダを描きます。

どうやら川に浮かべる船のようなものであることはイメージできているらしい。

 

横から見た図を描く子、その図にはオールが何本か出ています。

2階建てをイメージしている子、部屋があって、下の部屋にはなんだか爆弾が仕掛けられていて、、これは海賊船??

 

旗を立てている子、モーターエンジンが搭載されている子。色々なイメージがおもしろい。

「これは何で作るの?」と聞くと、「竹を組んで」と答えるさすが職人気質のR(笑)

イメージがはっきりしている子も、空想的な子もいてそれが混ざり合っていきます。

 

その後、イカダの絵本をぐっちーが読んでくれて、ますますイカダのイメージが膨らみます。

そしたら、子供ミーティングでまた新たな展開に。

 

「びゅーんて進むめっちゃ早いイカダがいい」ってAが言うと、

「え~それじゃこわーい、僕はゆっくりのがいい」っていうK。

一人一人聞いてみると、、

早いイカダがいいという子が3人。ゆっくりがいいという子が3人。

理由はこれまたそれぞれ。

「ぜってー、早いの。だっておもしろいじゃん。」

「モーターつけたらさ、ジェットコースターみたいになるから。」

「早く川を下って早く戻ってこれるから」と早いチーム。

 

ゆっくりがいい子は、「早いと水しぶきが顔にかかるから嫌」「みんなと離れちゃうと戻ってこられなくなりそう」「早いスピードのは怖い」と慎重なご意見。

 

「じゃあ、早い、ゆっくりチームに分かれてこの3人ずつで作る?」ということとなり。

 

竹を切る日へと続きます。

竹を切り出した場所はたろやま。でも、なかなかちょうどいい太さの竹が田んぼの入り口付近にない。

ずーっと奥の突き当り、階段下まで行って(300メートルくらい先)、竹切り。

 

その日は雨。

交代でのこぎりで切るのだけど、まあ集中力が続いて30分くらいかなと思っていたのだけど、1時間以上、その狭い場所で、代わる代わるのこぎりを扱いながら竹をよき長さに切っていく子供たち。

 

実は私、こういうクリエイティブ系の作業がほんと苦手で、私のほうがすでに早い段階で飽きていました(笑)

でもね、なんか子供たち何回も「おれ切りたい!」っていうし、他の子が切ってても、隣で押さえててくれる。

もちろん出番がなくて、手が空いたらひと遊びなんだけど、作業が自分の番になったらちゃんと戻ってくるのね。

しかも、何本か切り出してみて、実際地面に並べてみて、足らなければ「まだ切る」っていう。

 

疲れたから、やめたいから、これでいいっていう子がいなかったのね、まあそれはその子の気持ちだから、そういう子がいてもいいという前提ですけど。

 

どんだけ真剣なんだ、これはもう3歳児までの遊びとは全然違ってきてるって感じた瞬間でした。

「遊び」のおもしろさが、この子たちの中で、「自己実現」と「自分と他者との協同作業」の喜びに大きく変化してるって思いました。

 

で、竹を切ったら、竹を運ぶでしょ。30本はある竹を持って、あの距離を何往復もするわけですよ。

1人2,3本持つんだけど、雨だから途中ずるずる落とすんですよ(笑)

落としたら、また次にきた子が拾っていく。竹も手もドロドロになりながら。

 

竹切りから不思議と各チームに分かれて作業していた子供たち。

田んぼまで運んだ竹を、イカダ風に並べてみます。

それもチームそれぞれで違うの(笑)

 

ゆっくりチームは長さをきれいにそろえて並べ、長い竹は再度切るのがいいと。

早いチームは竹の長さは気にならない様子。

麻ひもを結ぶところはスタッフがお手伝い。

 

そしてまた別の日、イカダの装備が始まります。

ここからも数日の作業でしたがまとめて書きます。

 

ゆっくりチームはテープを持ち出して、竹をしっかり固定。ぐるぐる巻きに。

安定感を追求したKは、ガムテープとかわいいテープをうまく使いながらイカダを完全固定していきます。

少しおうちでアイディアをもらって、発砲スチロールを持ってきたので、イカダの底に蓋を2つ、イカダの前には箱を2つ取り付けました。

その箱は、一つは魚を入れる用、もう一つは溺れそうになったらそこに入れる救助用だそう。

 

旗をつけたいと言っていたAが枝と画用紙を使って旗を立てます。

Aの作業は非常に緻密で生活に直結しています。旗はどうやらアンテナがわり。

数日後、イカダのコントローラー兼スマホを作成。

見ると、コントローラーから旗まで糸が繋がっています。すごい!

 

そして、もう一人のAは、イカダの端にテープを裏表逆に貼り付けたいと言います。

最初私はその構想がさっぱりわからなかったのだけど、

「う~ん、どうしたいかわからないからやってみて」というと、、、。

なるほど、両面テープの要領で、彼はイカダの端にテープをつけたかったんです。

それは、何のためか、というと、イカダから落ちそうになった時に滑り止めになるから、という発想でした。これまたすごい!

 

早いチームは、いつの間にか、おもちチームと独自の名前を付けていました(笑)

で、ここには2階建て構想をあきらめていないメンバーが。

なので、2階建ての梯子を根気よく3人持ち回りで金づちと釘を使って廃材を取り付けていきます。

竹に対して斜めに階段を取り付けたいから、廃材もちゃんと斜めに切り出されたものを選んでいます。彼ら3人は、この階段取付作業にとにかく時間を使っていました。

そこがこのチームの大事なポイントだったんですね。

そして、イカダに乗ったまま自動的に釣りができるようにと、糸とするめをイカダの端に取り付けます(笑)

両チームとも、他にも装備作業がこまごまあったのですが省略(笑)

 

別日、イカダを川べりまで運んでくれたのは田んぼ作業を終えたお父さんたち。

子供たちの作業のこれまでをお話しします。みんなその出来にびっくり。

とはいえ、大人たちは、浮かばないんじゃないの?とはどこかで思っていました。

浮くか浮かないかが大事じゃないんで、結果はどうあれですけどね。

 

でもね、2学期最終日。イカダは浮かびました。

 

最初は恐る恐る乗ってみると、水が竹と竹の隙間からじゅわっと入ってきます。

だから怖い。すぐ「降りる」という子続出(笑)

 

だけど、少しずつ、何度も、チャレンジしてみると、、、「たのしーい!!」に変わっていました。交代で押したり、乗ったり。もう早いもゆっくりもありません。

 

面白かったのは、「ぜってー早いのがいい!」って言ってたAが一番イカダのスピード感を怖がっていたということ。

スピードと言っても、ゆるやか流れなのでスピードも何もという感じですが、進むということが自分が思ったより、怖かったんでしょうね。

 

「やってみて、わかる」、「やってみなきゃ、わからない」

そんなことが世の中にはたくさんあります。

 

「今」を生きてる子供たちはきっとその積み重ねの中で、豊かな心を自分なりに育てていくのだと思います。

 

先々を心配して転ばぬ先の杖を用意してあげることが、彼らが望むことなのか、

大人が用意したものを子どもにとって必要、または喜ぶであろうからと、こどもの表情と心を見ないまま与え続けることが、彼らが育つということなのか。

 

「自発的に生きる、人と共に生きる」ということを考えた時、やっぱり私は首をかしげたくなります。

 

イカダの作り方をネットで調べて、作ることと、

仲間と試行錯誤しながら、作る、ということは、

結果、「イカダを作る」ということに変わりはないけれど、

心の感じ方、相互の中で生まれるわくわく感、自分の中に生まれる変化、

その過程はまるで違います。

 

人と人との間で、心が揺れる、動く。

そのことを手放したらおしまい、そんな風に感じる今日この頃です。

 

さとのたね

代表 岸本 梓